火山の中はどうなっている?マグマだまり・火道・地下構造を科学的に見る

知っておきたい雑学

火山の断面図というと、山の下に大きな赤い「マグマだまり」があり、そこから一本の「火道」が山頂の火口まで伸びている絵を思い浮かべる人が多いと思います。あの図は火山の仕組みを理解する入口としては、とても分かりやすいものです。

ただ、実際の火山の地下は、もう少し複雑です。火山そのものは中が空洞になった山ではなく、基本的には岩石の塊です。その岩石の中を、マグマが割れ目や火道を通り、複数の深さにある貯留域へ出入りします。しかも近年の火山学では、「巨大な液体のマグマ室が一つだけある」というより、結晶を多く含む領域の中に融けた部分が点在し、それらがつながったり切れたりする地下システムとして考える見方が重視されています。

では、火山の中には具体的に何があるのでしょうか。教科書の断面図はどこまで本当で、どこからが単純化なのでしょう。そこで今回は、気象庁の火山解説、米国地質調査所(USGS)の資料、マグマ貯留系を扱った研究を手がかりに、教科書の断面図を少しずつ実際の地下像へ近づけてみます。

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火山の中は「巨大な空洞」ではない

火山は、内部が洞窟のように空いていて、その底に大量のマグマがたまっている山ではありません。成層火山なら、過去の噴火で出た溶岩や火山灰、火山れきなどが何度も積み重なって山体がつくられています。USGSの火山解説でも、成層火山は噴火で放出された物質が蓄積することで成長し、その内部にはマグマが上昇する火道や、割れ目に入り込んで固まった岩脈が存在すると説明されています。

ここは少しイメージを切り替えたほうが分かりやすいです。火山の中に「広い空間があり、そこをマグマが流れている」というより、固い岩盤の中へマグマが押し入り、通り道をつくると考えたほうが近い。マグマは岩石より軽く、地下から上昇する力を持ちますが、何もない空洞を上がってくるわけではありません。周囲の岩石を押し広げたり、既存の割れ目を利用したり、新しい割れ目をつくったりしながら移動します。

噴火が終わると、その通り道のマグマが冷えて固まることもあります。長い時間の侵食で古い火山の外側が削られると、かつて火道を満たしていた固い岩体や、割れ目に入り込んだ岩脈だけが残る場合があります。つまり、火山の「配管」は永遠に開いた管ではなく、開いたり、詰まったり、別の経路ができたりするものです。

だから「火山の中はどうなっている?」という問いへの最初の答えは、ほとんどは岩石で、その岩石の中にマグマや火山ガスが移動する経路と、一時的にたまる場所がある、となります。

教科書の「マグマだまり→火道→火口」はどこまで本当?

では、学校で習う「マグマだまり」「火道」「火口」という三つ組は間違いなのでしょうか。

これは間違いではありません。火山の基本を説明するには、今でもかなり便利な整理です。気象庁の「火山噴火の仕組み」でも、地下でできたマグマが上昇し、いったんマグマだまりに蓄えられるなどの過程を経て地表へ噴出すると説明されています。地下の貯留域から地表へ向かってマグマが上昇する経路が火道で、その出口が火口です。

ただし、「マグマだまり」を大きな地下タンクのように考えると、話が少しずれてきます。

昔から使われる模式図では、丸い部屋の中に液体のマグマがたっぷりあり、そこから一本の管が伸びています。実際には、マグマが一か所に集まりやすい領域があっても、その形はきれいな球形とは限りません。地下の岩石の強さ、断層や割れ目、地殻にかかる力、マグマの供給量などによって、薄く広がったり、複数の場所に分かれたり、縦方向に何段階もの貯留域ができたりします。

火道も同じです。一本の固定された煙突が、いつでも火口まで貫通しているとは限りません。噴火のたびに同じ経路の一部を使うこともあれば、新しい割れ目へマグマが入り込むこともあります。山頂からだけでなく山腹の割れ目から噴火する火山があるのも、マグマの経路が一本に限定されないからです。

そして、噴火が近づくとマグマの中で別の変化も起きます。地下深くでは高い圧力のためマグマに溶け込んでいた水蒸気や二酸化炭素などの成分が、上昇して圧力が下がるにつれて気泡として分離しやすくなります。気象庁は、火口が開いて圧力が下がるとマグマが発泡し、体積が増えることが噴出に関わると説明しています。

ここまでなら、教科書の図で十分です。けれど、「マグマは地下でどんな状態で待っているのか」というところまで進むと、あの図だけでは足りなくなります。

実際の地下は「一つのマグマ室」より複雑

火山の地下像が大きく変わってきたのは、マグマがどこに、どんな状態で存在するのかを、地震波や岩石の化学組成などから細かく調べられるようになってきたからです。

2017年、Katharine V. Cashman、R. Stephen J. Sparks、Jonathan D. Blundyは『Science』にレビュー論文を発表しました。「Vertically extensive and unstable magmatic systems: A unified view of igneous processes」です。そこで整理されているのは、火山を上部地殻の一個のマグマ室だけで考えるのではなく、地殻の深い部分から浅い部分まで続く「地殻を縦断するマグマ系」として捉える考え方です。

その議論でよく出てくるのが「crystal mush(結晶マッシュ)」です。

言葉だけ見ると急に難しくなりますが、考え方はそれほどややこしくありません。マグマは常に完全な液体ではなく、冷えるにつれて鉱物の結晶が増えていきます。すると、液体の部分と大量の結晶が混ざった、どろっとした状態になります。さらに冷えれば流れにくくなり、結晶同士が組み合わさった骨組みのすき間に融けた成分が残るような状態にもなります。

USGSの「Models of magma storage」では、単一の大きな融体の塊を想定する標準的なモデルだけでは多くの活動的火山系をうまく説明できないとして、結晶の多い領域の中に複数の融体ポケットが存在し、それらが噴火の過程で順番につながって利用されるような更新モデルを示しています。

だからといって、「昔のマグマだまり説は間違いだった」と言い切るのも違います。Cashmanたちのレビューは、浅い場所に融体の多いマグマ室が短い期間で組み立てられ、噴火につながる可能性も扱っています。つまり、液体の多いマグマだまりが存在しないのではなく、それが火山の一生を通してずっと同じ形で存在する巨大タンクとは限らない、という話です。

2022年のDufek、Cashman、Hooft、Bedrosianによるカスケード火山のマグマ貯留系のレビューでも、多くのマグマ系が地殻内の複数レベルに構築されることが、地球化学と地球物理の研究を組み合わせて論じられています。

僕はこのあたりの資料を並べて読むと、「マグマだまり」という言葉そのものより、一枚の断面図を実物そのままの形だと思ってしまうことが誤解のもとになりやすいと感じます。模式図は、複雑な地下から必要な情報だけを抜き出したものです。火山の仕組みを最初に知るには役立ちますが、その奥にはもっと入り組んだ構造があります。

日本の火山ではどう見える?桜島の地下を例にする

抽象的な「複数の貯留域」という話だけでは、まだ少しつかみにくいかもしれません。日本の火山を一つ例にすると、かなりイメージしやすくなります。

2019年、Arayaらは桜島の過去3回のプリニー式噴火を対象に、噴出物に含まれる鉱物や、その鉱物の中に閉じ込められたマグマ由来の成分を詳しく分析しました。論文は『Scientific Reports』の「Shallow magma pre-charge during repeated Plinian eruptions at Sakurajima volcano」です。

産業技術総合研究所 地質調査総合センターの解説によると、桜島では姶良カルデラの地下およそ10kmに比較的深いマグマ貯留域があると考えられています。ところが研究では、大規模噴火の直前、深さ約1〜3kmの浅い火道にかなりの量のマグマが一時的にたまったことが示されました。

これが面白いのは、「地下10kmのマグマだまりから、そのまま一気に火口へ」という単純な流れではないところです。深い場所にある貯留域から浅い場所へマグマが供給され、浅部でもいったん集まり、そこから噴火へ進んだと考えられています。

もちろん、桜島で推定された深さを、そのまま富士山や阿蘇山やハワイの火山に当てはめることはできません。火山ごとに地下構造は違いますし、同じ火山でも活動する時期によって、どこにマグマが集まるかが変わる可能性があります。

それでもこの研究は、「マグマだまりが一個あり、その上に火道が一本ある」という図を現実に近づけるうえで分かりやすい例です。地下には深い貯留域と浅い貯留域があり、その間をマグマが移動する。火道そのものが、一時的な貯留場所として働くこともある。火山内部は、固定された設備というより、活動に応じて状態が変化するシステムとして見るほうが自然です。

見えない火山内部をどうやって調べるのか

では、そんな地下像をどうやって知るのでしょう。

地下数km、十数kmの話をしているのに、誰もそこへ直接入って見たわけではありません。それでも「この深さにマグマがある」「このあたりをマグマが移動している」と推定できるのはなぜでしょうか。

答えは、一つの観測で火山内部を丸ごと見るのではなく、違う種類の証拠を重ねるからです。

気象庁の火山観測の解説を見ると、日本の火山監視では地震計、傾斜計、GNSS、監視カメラ、熱観測、火山ガス観測、噴出物調査などが組み合わされています。それぞれ見ているものが違います。

地下でマグマが岩石を押し広げたり、割れ目を進んだりすると、火山性地震や微動が発生することがあります。地震の発生場所や深さが時間とともにどう変わるかを追えば、地下で何かが移動している経路を推定できます。

地面の変形も重要です。地下にマグマが入って圧力が高まれば、山体がわずかに膨らむことがあります。GNSSは観測点どうしの距離変化を、傾斜計は地面のわずかな傾きを測り、地下の圧力源の位置や変化を考える手がかりにします。ただ、山が膨らんだからといって、その形だけで「ここに球形のマグマだまりがある」と断定できるわけではありません。観測された地表変形を説明するために、地下の圧力源をモデル化しているからです。

火山ガスも、地下の状態を知る手がかりになります。マグマに含まれる水や二酸化硫黄、二酸化炭素などは、圧力や温度の変化によって放出のされ方が変わります。気象庁は二酸化硫黄の放出量などを火山活動の評価に使っています。

さらに、噴火で実際に出てきた岩石や鉱物を調べる方法があります。鉱物の結晶がどんな順番で成長したのか、結晶中に閉じ込められた小さな融体にどれくらい水や二酸化炭素が含まれていたのかを調べると、噴火前の圧力や温度、マグマがいた深さを推定できる場合があります。先ほどの桜島研究も、この「噴出物から地下の履歴を読む」方法を使っています。

僕が今回の資料を見比べて特に興味を引かれたのは、この「別々の証拠を重ねる」部分でした。火山の地下にカメラを入れて断面を見るわけではないのに、地震、地面の膨らみ、ガス、岩石を合わせると、少しずつ内部像が絞られていきます。だからこそ地下構造は「直接見えた事実」ではなく、観測に最もよく合う推定として扱う必要があります。

噴火すると地下は空っぽになるのか

もう一つ、火山内部を考えると気になるのが、噴火後の地下です。

大量の溶岩が地上へ出たなら、その分だけ地下に巨大な空洞が残るように思えます。けれど、実際にはそんな単純な穴がそのまま保存されるわけではありません。

USGSのHawaiian Volcano Observatoryは、「大量の溶岩が出たあと、地下に大きな空洞が残るのか」という質問への解説で、答えは「no」としています。Kīlaueaでは、浅い貯留域からマグマが抜けると、その上の地面が沈降して空間が調整されると説明されています。

ただし、「地下に空間が一切できない」という意味ではありません。マグマの移動や圧力低下によって周囲の岩盤は変形し、割れ目が開いたり閉じたりします。大規模な噴火で地下のマグマが大量に移動した場合には、上の岩盤が支えを失って広い範囲で陥没し、カルデラが形成されることもあります。USGSの火山解説でも、クレーター湖の例などを通して、マグマが大きく失われたあとに上部が崩壊してカルデラができる仕組みが説明されています。

なので、「噴火=地下タンクが空になり、山の下に巨大洞窟が完成する」という図ではありません。噴火中も深部から新しいマグマが供給される場合がありますし、全部が噴出するわけでもありません。残ったマグマが冷えて固まることもあれば、岩盤が沈み、貯留域の形そのものが変わることもあります。

火山の地下は、噴火前も噴火後も固定された容器ではなく、圧力・温度・マグマ供給に応じて形や状態を変えているわけです。

火山の「中身」を一言で言うなら

ここまでの話を、できるだけ単純に戻してみます。

火山の中身は、固い岩石の中に、マグマ・火山ガス・熱水などが移動する複雑な経路と貯留域が組み込まれた地下システムです。

教科書の「マグマだまり→火道→火口」は、そのシステムを初めて理解するにはよくできた図です。マグマが地下にたまり、上昇し、地表へ出るという大筋は間違っていません。

ただ、実物ではマグマだまりが一個とは限らず、地殻の深い場所から浅い場所まで複数の貯留域がありえます。マグマの多くが完全な液体として存在するとも限らず、結晶を多く含むマッシュ状の領域の中に融体が分布する場合があります。火道も一本の永久的な管ではなく、割れ目の開閉や新しい貫入によって変化します。

そして、その姿は火山ごとに違います。研究が進むほど断面図が細かくなるのは、「昔の説明が全部間違っていた」からではなく、観測できる情報が増え、単純な模型の奥にある構造まで分けて考えられるようになったからです。

僕は、火山の内部を知ろうとするとき、「本当の断面図がどこかに一枚ある」と考えないほうが面白いと思っています。地震や地殻変動、ガス、噴出した岩石を手がかりに、その時点でもっとも筋の通る地下像を組み立てていく。火山の中身は、完成した絵というより、観測によって更新され続ける模型として見るほうが実態に近いようです。

参考文献・出典

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