四つ葉のクローバーはなぜできる?遺伝と環境、踏まれる説を研究から調べた

知っておきたい雑学

四つ葉のクローバーを見つけると、少し得をしたような気分になります。でも、よく考えると妙です。ほとんどは三つ葉なのに、なぜ時々だけ四つ葉が混じるのでしょうか。

「突然変異だから」「人に踏まれたから」と説明されることがありますが、調べてみると、どちらか一つで決められる話ではありません。シロツメクサには小葉の数に関わる遺伝的な要因があり、その形質が実際に現れるかどうかは季節や生育環境にも強く左右されることが、遺伝研究から分かっています。

そして「踏まれると四つ葉になる」という説も、完全な作り話と切り捨てられるほど単純ではない一方、踏圧が四つ葉を増やす直接的な因果関係が十分に確立しているわけでもありません。

四つ葉は、遺伝か環境かの二択ではなく、両方が重なって現れる現象として見るのがいちばん自然です。

PR・広告

自然か、宇宙か、神秘か。目を疑う3つの珍品

岩から生える金属の立方体、宇宙から届いた石鉄隕石、 そして迫力あるマハーカーラ像。
写真だけでも思わず見入る、不思議な3品を集めました。

これが大黒天!?異形の神像

大黒天(マハーカーラ) 銅造彫金仕上げ

価格:528000円
(2026/10/22 06:57時点)

まず、「四つ葉」は4枚の葉ではない

最初に、言葉を少しだけ整理しておきます。

シロツメクサのいわゆる「三つ葉」は、3枚の葉が集まっているわけではありません。植物学では、3つの小葉が集まって1枚の葉をつくっています。四つ葉の場合は、その小葉が4つになっています。

日本植物生理学会の植物Q&Aでも、普通のクローバーは「3小葉からなる葉」を持ち、四つ葉は「4小葉からなる葉」を持つと説明されています。塚谷裕一氏の回答「四葉のクローバーと突然変異について」です。NC State Extensionのシロツメクサ解説でも、通常の小葉数は3とされています。White Clover

なので、四つ葉で起きていることを正確に言うなら、問題は「葉が1枚増えた」ことではなく、1枚の葉をつくる小葉の数が3から4へ変わったことです。

ここを押さえると、「なぜ四つ葉になるのか」という疑問も少し見えやすくなります。考えるべきなのは、葉ができる途中で、なぜ小葉の数を決める仕組みがいつもと違う結果になるのか、ということだからです。

四つ葉ができる答えは「遺伝か環境か」の二択ではない

四つ葉について調べると、「突然変異」と「踏まれた刺激」という二つの説明が並ぶことがあります。すると、どちらが本当なのか決めたくなります。

ところが、2010年にCrop Scienceに掲載されたシロツメクサの遺伝研究を見ると、この二択そのものが少しずれています。

Rebecca M. Tashiroらは、小葉数や葉の模様が異なるシロツメクサを使い、子の世代でどの形質が現れるかを調べ、その結果をDNA上の分子マーカーと照らし合わせました。原論文からは、小葉数に遺伝的な要因があることが読み取れます。

同時に、多小葉になる形質は環境の影響をかなり受けました。研究では夏と冬、異なる場所や条件で植物を観察しており、小葉数の現れ方は一定ではありませんでした。同じ遺伝的背景を持つ植物でも条件によって姿が変わるなら、遺伝だけで四つ葉を説明することはできません。逆に、環境で姿が変わるからといって、遺伝的な違いが存在しないことにもなりません。

遺伝子は「必ず四つ葉を作るスイッチ」というより、ある形質が現れやすい背景の一部として働き、その結果を生育条件が押したり引いたりすると考えた方が近いでしょう。四つ葉を見つけたとき、その一枚だけから原因を一つに決めにくいのも、このためです。

遺伝学でいう表現型は、持っている遺伝情報が実際の姿や性質として現れたものです。ある遺伝的な要因を持っていても、いつでも同じ姿になるとは限りません。温度、日長、生育状態などによって、形質の出方が変わることがあります。

University of Georgiaの紹介記事でも、研究者Wayne Parrottは、四つ葉に関係する遺伝的要因があっても、日長や温度の条件が合わなければ形質が現れないと説明しています。Stephanie Schupska「Lucky find」

このため、「遺伝なら環境は関係ない」「環境でできるなら遺伝ではない」という分け方はできません。むしろ、どんな小葉数になりやすいかという遺伝的な背景があり、その性質がどれだけ表に出るかを環境が動かすと考える方が、研究結果に合っています。

2010年の遺伝研究で分かったこと――「四つ葉遺伝子発見」は少し言いすぎ

この2010年研究は、一般向けにはかなり分かりやすい言葉で紹介されました。

Science Societiesの公式ニュースリリースの見出しは、ずばり「Scientists Find Four-Leaf Clover Gene」です。直訳すれば「科学者が四つ葉のクローバーの遺伝子を発見」といった意味になります。

この見出しだけを見ると、「四つ葉にする一個の遺伝子が見つかり、その正体まで特定された」と受け取りたくなります。けれど、原論文の表現はもう少し慎重です。

論文が示したのは、小葉数に関係する形質とDNA上のマーカーの連鎖です。連鎖とは、ある形質と特定のDNA領域が一緒に受け継がれやすいことを利用して、その形質に関係する場所を絞り込む方法です。論文の要旨では、通常の三小葉形質は連鎖群H1上の少なくとも一つの遺伝子によって制御される、とされています。

ここで少しややこしいのは、研究者たちが多小葉形質の表現を夏と冬で比べたところ、結果が同じではなかったことです。論文本文では、環境の影響だけでなく、集団サイズやマーカー密度の問題、季節によって異なる遺伝領域が関与している可能性まで検討されています。

つまり、この研究から「遺伝が関係する」と言うのは妥当です。しかし、「四つ葉を作る唯一の遺伝子を発見した」と単純化すると、研究が示した範囲より強い言い方になります。

僕はこの原論文と広報を並べて読むと、四つ葉そのもの以上に、研究成果が一般向けの見出しになるときに何が省略されるのかが面白いところだと思います。広報が間違っているというより、見出しでは短く言わなければならない。その短さを、本文を読む側が「すべて解明された」という意味に広げないことが大切です。

「踏まれると四つ葉になる」は本当なのか

では、昔からよく語られる「クローバーは踏まれると四つ葉になる」という説明はどうでしょうか。

この説には、植物の発生という面から考えられる筋道があります。

葉が完成する前には、葉のもとになる小さな組織があります。これが葉原基です。日本植物生理学会の2006年の回答では、葉原基はデリケートで、傷や栄養状態などによって通常とは違う小葉数になる可能性が説明されています。ですから、「外からの刺激が葉の形成過程へ影響し、小葉数が変わることがある」という考え方自体は、完全に的外れとは言えません。

ただ、ここから「人や動物が踏むと四つ葉が増える」と言い切るには、もう一段の証拠が必要です。

2019年、日本植物生理学会のQ&Aで、この点がかなりはっきり整理されています。回答した櫻井英博氏は、踏むと四つ葉の割合が増えるという報告はあるものの、どの種や品種を、どんな条件で扱い、同じ条件で再現できたのかを明確にした報告は多くないと説明しています。「四葉のクローバーと植物ホルモンのエチレンとの関係」

さらに、機械的刺激と植物ホルモンのエチレンとの関係は植物一般で知られていても、「踏む→エチレンが増える→四つ葉が増える」という直接の因果関係は証明されていない、と区別しています。

ここは混ぜない方がいいところです。

「原基が傷つけば小葉数が変わる可能性がある」という発生上の説明と、「実際の野原で踏圧が四つ葉の発生率を上げる」という実証は同じではありません。前者にもっともらしい仕組みがあっても、それだけで後者まで証明されたことにはならないからです。

ですから、踏まれる説については、あり得る説明の一つではあるが、踏めば四つ葉ができると断定できるほど証拠は固まっていない、くらいに置いておくのが妥当だと思います。

なぜ一枚見つけると、その近くでも見つかることがあるのか

四つ葉は「一枚だけの偶然」と考えると分かりやすいのですが、実際には近い場所で複数見つかることがあります。

日本植物生理学会の2013年の回答では、四つ葉が近くにまとまって見つかることがあり、野外集団から、四つ葉やそれ以上の小葉を高い頻度でつける遺伝性の系統も選抜されてきたと説明されています。塚谷裕一氏の回答「四つ葉のクローバーの発生要因に関する研究ついて」

ここへシロツメクサの増え方を重ねると、近くで見つかりやすい理由を考えやすくなります。

シロツメクサは地面を這う**匍匐茎(ストロン)**を伸ばし、その節から根を出して広がる多年生植物です。NC State Extensionもこの生育形を説明しています。同じ個体が横へ広がれば、近い範囲に同じ遺伝的背景を持つ茎や葉が分布することになります。

もちろん、「近くに四つ葉が複数ある=全部が同じクローン」とは断定できません。種子から生えた別個体が混じることもありますし、局所的な温度、日当たり、栄養状態なども共通しています。

それでも、一枚見つけた周辺を探すことにまったく根拠がないわけではありません。多小葉を出しやすい遺伝型が存在し得ること、その形質が環境に左右されること、シロツメクサが匍匐茎で近くへ広がることを合わせると、四つ葉が局所的にまとまる状況は十分に考えられます。

この点は、四つ葉の「確率」を考えるときにも効いてきます。もし同じ株由来の葉や、似た遺伝的背景を持つ個体が一か所に集まっているなら、その場所の葉を一枚ずつ完全に独立したくじのようには扱えません。同じ場所で十枚の四つ葉が見つかったとしても、それが十回ばらばらに起きた珍事なのか、一つの遺伝的・環境的条件がまとまって現れたのかでは意味が違います。野外での「何枚に一枚」という数字が場所によって大きく揺れ得るのは、こうした群落の成り立ちも無関係ではありません。

ここでも、遺伝と環境は競争相手ではありません。同じ遺伝的背景が集まりやすい場所に、同じ局所環境が重なる。その二つを同時に考えた方が、観察されたまとまりを無理なく説明できます。

「1万分の1」はどこまで本当? 四つ葉の確率を固定しにくい理由

四つ葉については「1万分の1」という数字が語られることがありますが、この記事ではその数字を自然界の普遍的な発生率として採用しません。

理由の一つは、ここまで見てきた研究だけでも、四つ葉の出方が遺伝型と環境条件に左右されるからです。多小葉を出しやすい系統とそうでない系統があり、同じ遺伝的背景でも季節や環境によって表現が変わるなら、場所も条件も区別せず一つの確率へまとめるのは難しくなります。

もう一つ、出典を追うと数字の足場が思ったほど強くありません。

国立国会図書館のレファレンス協同データベースには、埼玉県立久喜図書館が2007年に「四つ葉のクローバーができるしくみ(原因、確率など)が知りたい。」という質問を調査した記録があります。その回答では、原因について専門家の情報を案内した一方、自然界における確率について確認できる資料は見当たらなかったと記録されています。レファレンス事例

これは「1万分の1が間違いだ」と証明する資料ではありません。2007年時点の図書館調査で、自然界の確率を裏づける資料を確認できなかった、という記録です。

だから僕は、ここで別の数字を作るより、「普遍的な1万分の1としては確認できない」とする方が誠実だと思います。四つ葉の希少さを知りたい気持ちはよく分かりますが、遺伝型も環境も違う群落を一つの数字で代表させると、分かりやすさの代わりに大事な条件が消えてしまいます。

四つ葉の確率を本当に比べるなら、同じ面積だけを数えるのか、葉の総数を分母にするのか、同じ株を重複して数えるのか、季節や品種をどうそろえるのか、といった条件まで決める必要があります。数字だけを見るより、まず「何をどう数えた確率なのか」を確認した方がよさそうです。

四つ葉をどう理解すればいいのか

ここまでの資料をまとめると、四つ葉のクローバーは「ただの偶然」でも「踏まれた結果」だけでもありません。

シロツメクサには小葉数に関係する遺伝的な背景があり、多小葉の形質は劣性的な要因と関係しながら、環境によって現れ方が変わります。葉原基への傷のような外的要因が小葉形成へ影響する可能性も考えられていますが、野外で人や動物に踏まれることが四つ葉を増やすという直接因果は、現在確認できる資料からは強く言えません。

そして、研究が進んでもなお、細胞がどのように位置を認識し、どの発達段階で何が変わって3小葉から4小葉になるのかという細部は、単純な一行では説明できないままです。

四つ葉を見たとき、「たまたま珍しい一枚が出た」とだけ考えるより、その一枚の背後に遺伝的な素因と環境条件が重なっていると考える方が、僕には面白く感じられます。仕組みを知ったから珍しさが薄れるのではなく、むしろ普通の三つ葉が毎回ほぼ同じ形を作れていることの方まで不思議に見えてきます。

参考文献・出典

コメント

タイトルとURLをコピーしました