波動が高い・低いとは結局何なのか?科学と心理学から「波動」を考える

生き方・考え方

「波動が高い人」「最近、波動が落ちている」「あの人とは波動が合う」。スピリチュアルな話でよく見かける言葉ですが、考えてみると少し不思議です。高い、低いと言う以上、本当に何かの周波数を測っているのでしょうか。それなら何Hzなのか、どこを測れば分かるのか、という疑問が出てきます。

先に答えを言うと、人の精神状態や人格を一つの物理的な周波数として測り、「波動が高い・低い」と判定する標準的な科学的測定法は、現在のところ確立されていません。一方で、「この人といると落ち着く」「場に入ったら空気が変わった気がする」といった感覚まで、全部ただの気のせいとして片づける必要もありません。人の感情が周囲へ伝わったり、人同士の行動や生理状態がある程度同期したりする現象は、実際に研究されています。

ややこしいのは、「波動」という一語の中に、物理学の周波数、気分の快・不快、元気さ、安心感、人との相性、さらには「良い人/悪い人」という価値判断まで入り込むことです。そこを一つずつ分けていくと、「波動が高い・低い」という言葉が何を表しているのかは、かなり見えやすくなります。

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「波動が高い・低い」は、まず二つの意味を分けた方がいい

「波動」という日本語そのものは、科学でも使われます。水面を伝わる波、音、電磁波など、物理現象としての波です。そこでは「何がどのように変化しているのか」「どれくらいの周期で繰り返すのか」といった対象があり、周波数を測ることもできます。

ところが、スピリチュアルな文脈で使われる「波動」はもっと広い意味を持っています。人の雰囲気、意識状態、感情、活力、居心地、場所の空気などをまとめて表し、愛や感謝、喜びを「高い」、恐れや怒り、不安を「低い」と説明する使い方もあります。発信者や考え方によって定義が違うので、科学用語のように一つの意味が共有されているわけではありません。

ここで最初に分けたいのは、物理量としての波動・周波数と、人の状態を表す比喩としての波動です。

比喩として「今日は波動が低い気がする」と言うだけなら、「今日は気分が重い」「余裕がない」「人と関わるのがしんどい」といった複数の感覚を短い一語にまとめられます。そういう使い方まで、わざわざ物理学を持ち出して否定する必要はないでしょう。日常語には、厳密な測定値ではないけれど感覚を共有するために便利な言葉がいくらでもあります。

ただ、その比喩をそのまま「実際に高い周波数を出している」「低い周波数だから悪い出来事を引き寄せる」と物理法則のように扱うなら話は変わります。そこでは、何を測っているのかという科学的な定義が必要になるからです。

つまり「波動」という言葉そのものが問題なのではなく、どの意味の波動について話しているのかを途中で入れ替えないことが大切です。

科学でいう「周波数」には、何が振動しているかと単位がある

物理学で「周波数が高い」と言うとき、その「高い」はかなり具体的です。

国際単位系を定める国際度量衡局(BIPM)のSI Brochureでは、周波数の単位 hertz(Hz)は s^-1、つまり1秒あたりの周期数として定義されています。1秒間に10回繰り返す周期現象なら10 Hz、100回なら100 Hzという具合です。

ここには少なくとも、「何が周期的に変化しているのか」「どの時間幅で数えるのか」「どう測定するのか」があります。音なら空気圧の変化、脳波なら頭皮上で記録される電位変動のように、対象となる現象を示せます。

人間の身体にも周期的な現象はいくつもあります。心拍にはリズムがありますし、脳の電気活動にはさまざまな周波数成分があります。しかし、身体に周波数を持つ現象が存在することと、「その人の精神性や人格の高さを示す一つの周波数」が存在することは同じではありません。

たとえば「感謝している人は○○Hz、怒っている人は△△Hz」と主張するなら、本来は何を測った値なのか、測定機器は何か、単位は何か、同じ条件なら別の研究者も同じ値を再現できるのか、といった説明が必要になります。現在、そうした形で人の霊的状態を一つの周波数へ変換する標準的な科学測定法は確立していません。

ここで「では、波動は存在しない」とまで言い切るのも少し雑です。科学でまだ測定法が確立していないことは、論理的には「あらゆる未知の現象が存在しない」という証明にはなりません。ただし、まだ測れていない可能性があることと、すでに物理的な周波数として存在が確認されていることは分ける必要があります。

補完療法の一例として、米国NIH傘下のNational Center for Complementary and Integrative Health(NCCIH)のReiki解説は、Reikiで想定されるエネルギー場の存在を支持する科学的証拠はないとしています。これはReikiという特定の考え方についての説明であって、あらゆるスピリチュアル体験を否定する資料ではありません。それでも、「エネルギー」「周波数」という物理学に近い言葉を使う場合、科学側では実際に何が確認されているかを分けておく一例にはなります。

僕がこの話で引っかかったのは、スピリチュアルな「波動」が科学用語らしい見た目を持っていることでした。ところが中身を追うと、物理量として扱うには定義が足りず、むしろ人間が感じ取っている別の現象をまとめて呼んでいる可能性が高そうです。

では、その「別の現象」とは何なのでしょうか。

「この人といると空気が変わる」は、全部気のせいとも言えない

人と会った瞬間に、「なんとなく明るい人だな」「この人といると妙に緊張する」と感じることがあります。こうした感覚を「相手の波動を受け取った」と表現する人もいるでしょう。

ここを全部「科学的ではないから錯覚」と片づけると、人間関係について分かっていることまで捨ててしまいます。私たちは相手の表情、声の調子、話す速さ、姿勢、視線、動き、距離の取り方など大量の情報を受け取っています。しかも、その影響は本人が逐一意識しているとは限りません。

感情が人から人へ伝わる現象は「感情伝染」として研究されています。Sigal G. Barsadeの2002年の実験では、94人のビジネススクールの学生が29グループに分かれ、訓練された協力者が異なる感情状態を表現する状況で課題に取り組みました。研究では、協力者の感情が集団メンバーへ伝わる変化が観察され、協力の増加、対立の減少、知覚された課題遂行の向上などにも影響が見られました。

もちろん、94人の学生を使った実験室研究だけで、すべての人間関係を説明することはできません。それでも「誰かの感情状態が、その場の他者に影響する」という現象そのものは、見えない霊的エネルギーを仮定しなくても研究対象になっています。

さらに、人同士の生理状態が時間的にそろう「対人生理同期」も研究されています。Mayo、Lavidor、Gordonによる2021年の系統的レビューとメタ分析は、自律神経系の同期と人間関係やパフォーマンスとの関連をまとめました。ただ、結果は単純ではありません。関係性との全体的な関連は小さく、研究間のばらつきも大きいものでした。パフォーマンスとの関連も見られましたが、これも文脈や測定法の違いを無視できません。

同期研究をさらに広く整理したdaSilvaとWoodのレビューも、行動や生理の同期が社会的理解や協力、つながりに関係しうる一方、同期が多ければ多いほど常に良いわけではないと論じています。

このあたりは、「波動が合う」という表現がなぜ直感的にしっくりくるのかを考えるヒントになります。人は実際に互いへ影響し合い、場合によっては動きや生理反応まである程度そろう。しかし、それをそのまま「二人の霊的周波数が一致した」と置き換える根拠はありません。

日常の感覚と科学的説明は、必ずしも敵同士ではないんですよね。「何かを感じた」という経験を残したまま、その原因については複数の可能性を分けて考えられます。

「高い=良い、低い=悪い」にすると感情の仕組みを取り違える

スピリチュアルな説明では、愛、感謝、喜び、安心などが「高い波動」、怒り、恐れ、不安、悲しみなどが「低い波動」に置かれることがあります。直感的には分かりやすいのですが、これには「気分が良い/悪い」と「エネルギーが高い/低い」という別の軸が混ざっています。

感情研究では、感情を一列に並べるのではなく、複数の次元で捉える考え方があります。代表的なものの一つが、James A. Russellが1980年に示した感情の円環モデルです。このモデルでは、感情状態を大きく「快―不快」と「覚醒度」の二つの軸で整理します。

穏やかでリラックスしている状態は、気分としては快でも、覚醒度は低めです。反対に、怒りや激しい苛立ちは不快ですが、覚醒度は高い。つまり「エネルギーが高い状態」と「良い感情」は同じではありません。

先ほどのBarsadeの実験も、この区別がはっきりしています。協力者の状態は「快/不快」と「高エネルギー/低エネルギー」を組み合わせて設定されており、明るく活発な状態だけでなく、穏やかで温かい状態、敵対的で苛立った状態、落ち込んで活力が低い状態が分けられていました。

整理すると、こんな組み合わせが存在します。

  • 快で高活性:明るく活発、興奮して楽しい
  • 快で低活性:穏やか、安心、リラックス
  • 不快で高活性:怒り、苛立ち、強い緊張
  • 不快で低活性:沈んだ気分、だるさ、活力の低下

この四つを見れば、「高い=良い、低い=悪い」という一本のものさしでは扱いきれないことが分かります。

もし「波動が高い」を「気分が良い」という意味で使うなら、穏やかな安心も含まれるはずです。ところが「エネルギーが高い」という意味に寄せると、怒りや焦りも高活性になります。さらに「人として良い状態」という意味まで加えると、今度は心理状態の説明から道徳的な評価へ変わってしまいます。

「高い」という一語が、周波数の高さ、活力の高さ、快感情、精神的な成熟、人格の良さまで兼任すると、話は混乱しやすくなります。「波動」という言葉を使うこと自体より、何を高いと呼んでいるのかを分けた方が、人の状態をずっと正確に見られます。

ネガティブ感情まで「低波動」と呼ぶと、人を裁く言葉になりやすい

「波動を上げるために、ネガティブな感情を手放しましょう」という言い方もよく見かけます。気分が楽になる方向を目指すこと自体は、もちろん悪いことではありません。ただ、怒りや悲しみ、不安が出た時点で「自分は低い状態だ」と評価するようになると、少し別の問題が出てきます。

感情は、快か不快かだけで役割を決められません。WeidmanとKrossによる2021年の研究は、6つの研究、合計1,409人を対象に、怒り、感謝、羨望、誇りなどの感情が日常生活の中でどのような目的に使われるかを調べています。そこから見えてくるのは、「不快な感情だから常に役に立たない」「快い感情だから常に正しい」とは言い切れないということです。感情の働きは、その場の目的や状況によって変わります。

だからといって、不快な感情を積極的に増やせばいいわけでもありません。ここで言いたいのは、不快であることと、無価値であることは同じではないということです。

感情に対する「評価の仕方」を調べた研究もあります。Fordらの2018年の研究では、複数の研究を通じて、ネガティブな感情や思考を善悪で裁かず受け入れる傾向と心理的健康との関連が調べられました。Study 1は1,003人、Study 2は156人、Study 3は222人で、ネガティブな精神経験を判断せず受容することが、より良い心理的健康と関連していました。

この研究も「波動」という言葉を検証したものではありませんし、「つらい感情は放置していい」という意味でもありません。ただ、「嫌な感情が出た=自分の状態が低い=早く高い状態へ戻さなければ」と二重に自分を評価する考え方には、慎重になった方がよさそうです。

この「低波動」という言葉を他人へ向けると、別の問題も出てきます。

落ち込んでいる人、怒っている人、不安が強い人、疲れている人を一まとめに「波動が低い人」と呼ぶと、その人が今どんな状況にいるのかより先に、人格のランクを付けるような響きが出てきます。「波動が低いから悪いことを引き寄せた」とまで言えば、病気、喪失、経済的な困難、人間関係のトラブルなどを抱えている人に、その原因を本人の精神状態として返してしまうこともあります。

もちろん、「この人と一緒にいると自分まで消耗するから距離を取る」という判断は別です。相手を善悪で格付けしなくても、自分の境界線を守ることはできます。「今の自分にはこの関係がきつい」と「相手は低い人だ」は似ているようで、かなり違う言葉です。

僕はここで、「波動」という言葉が便利だからこそ少し怖い面もあると思いました。状態の説明だったはずの言葉が、いつの間にか人間の価値の説明に変わりやすいからです。

「波動を上げる」を現実の言葉に翻訳すると、かなり分かりやすくなる

「波動」という言葉そのものを捨てる必要はないと思います。比喩としてしっくりくるなら使ってもいい。ただ、自分の状態を整えるために使うなら、もう一段だけ具体的な言葉へ翻訳すると役立ちやすくなります。

たとえば「今日は波動が低い」と感じたとき、それが何を意味しているのか分けてみます。

  • 寝不足で身体が重い
  • 人と会いすぎて疲れている
  • 仕事や予定への緊張が続いている
  • 怒りが残っている
  • 不安で注意が狭くなっている
  • 自分への否定的な考えが止まらない
  • 周囲の刺激が多くて落ち着かない
  • 特定の人とのやり取りで消耗している

同じ「低い」でも、中身はかなり違います。寝不足なら休息の問題かもしれませんし、対人ストレスなら相手との距離や境界線の問題かもしれません。原因を一語でまとめずに分けるだけでも、次に考えることは変わってきます。

反対に「波動が高い」も、ハイテンションで元気いっぱいな状態だけを意味する必要はありません。Russellの感情モデルを思い出すと、落ち着いて安心している状態は低覚醒でも快です。集中できている、周囲に余裕を持って反応できる、好奇心が戻っている、身体が休まっている、といった静かな状態も十分に「調子がいい」と言えます。

「波動が合う・合わない」も同じです。

会話のテンポなのか、価値観の違いなのか。相手の声や表情で緊張するのか、距離の詰め方が苦手なのか、それともこちらが疲れているだけなのか。二人の間で互いの緊張が増幅している可能性も含め、こうして具体化すると、「なんとなく合わない」という感覚を無視せずに、原因を一つに決めつけることも避けられます。

感情伝染や対人同期の研究が示しているのも、人間関係には相互作用があるということです。相手の状態に影響されることはあり得るし、こちらの状態も相手へ影響します。ただし、それは「相手が低波動だから悪いエネルギーを浴びた」という一方向の説明より、ずっと複雑です。

「波動を上げる」という目標も、「常にポジティブでいる」に置き換えるより、自分は今どんな状態から、どんな状態へ移りたいのかを考えた方が具体的になります。興奮を増やしたい日もあれば、むしろ静かに落ち着きたい日もあるでしょう。人とつながりたいときもあれば、一人で刺激を減らしたいときもあります。

“高い状態”を一つに固定しない方が、人間の調子には合っています。

結局「波動」とは何なのか――比喩としては使えるが、説明を止める言葉にはしない

「波動が高い・低い」という言葉は、科学で一つの数値として測れるものというより、複数の心理状態や対人感覚を一つにまとめた比喩として読むのがいちばん無理がありません。

中には、物理学の周波数と同じように「人にも固有のHzがある」「感情ごとに周波数が決まっている」と考える立場もあります。しかし、現在の科学でそこまでを確認できる標準的な測定法は見つかりません。少なくとも、物理学でいうHzと同じ意味で既知の事実として扱うことはできません。

一方、「人の雰囲気なんて全部思い込みだ」と言い切るのも違います。人の感情が他人へ伝わること、行動や生理反応が同期すること、感情が快・不快だけでなく覚醒度の違いを持つことは研究されています。私たちが「空気が変わった」「この人とは合う」と感じる背景には、表情、声、動き、緊張、期待、過去の経験など、いくつもの要因が重なっているのでしょう。

だから僕は、「波動」という言葉を科学か迷信かの二択だけで扱うより、その言葉が今、何を指しているのかを一段具体的にする方が面白いと思います。曖昧な感覚を無理に否定せず、そこから疲労や緊張、安心、人との相互作用などへ言葉をほどいていけば、「何かを感じた」という感覚と、実際に考えられる原因を両方残せます。

「波動」は、便利だからこそ少し立ち止まって使いたい言葉になりました。気分、活力、人との相性、物理的な周波数まで一度に入れられるぶん、何を指しているのかが見えにくくなるからです。僕なら次に「今日は波動が低いな」と感じたとき、その言葉を捨てるのではなく、「具体的には何がしんどいんだろう」と一度だけ聞き直してみます。そのくらいの使い方なら、この曖昧な言葉とも無理なく付き合えそうです。

参考文献・出典

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  • Weidman, A. C., & Kross, E. (2021). Examining emotional tool use in daily life. Journal of Personality and Social Psychology, 120(5), 1344–1366. https://doi.org/10.1037/pspp0000292
  • National Center for Complementary and Integrative Health. Reiki. https://www.nccih.nih.gov/health/reiki

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