水の性質がヤバすぎる|雨が降る確率は10億年に1回?

水 知っておきたい雑学

水は自然界で最も「異常」な物質だった|知れば知るほど面白い水の科学

夜、風呂に浸かっていた。

一人暮らしのユニットバスで、ぬるめのお湯にぼんやり浸かっていると、ふと思った。

「水って、なんなんだろう」

いや、何って言われても水は水だ。蛇口をひねれば出てくるし、コンビニで100円で買える。この世で最も「当たり前」な物質のひとつだと思う。

でもこないだ、夜中にネットの海をさまよっていたら、水に関するとんでもない話をいくつも見つけてしまった。

水は、自然界で最も異常な物質である。

最初は「大げさだな」と思った。でも調べれば調べるほど、水というのは普通じゃなかった。凍ると膨張するのも、氷が水に浮くのも、雨が降ること自体が確率的にありえないことも——全部、水が「異常」であるがゆえに起こっていた。

しかもその「異常さ」のおかげで、僕たちは生きている。

今回は、風呂場で芽生えた疑問をきっかけに調べた「水の異常な性質」について書いてみたい。知れば知るほど、蛇口から出てくる透明な液体が怖くなる——かもしれない。

ちなみに今回調べた内容は3つ。「なぜ水は凍ると膨張するのか」「魚をお湯で育てるとどうなるのか」「なぜ雨は確率的にありえないのか」だ。どれも日常的な疑問に見えて、掘ってみたら底が見えないくらい深かった。

水は凍ると「膨張する」という異常

まず一番驚いたのがこれだ。

水は凍ると体積が増える。

「え、それ普通じゃないの?」と思った人もいるかもしれない。僕も最初はそう思った。ペットボトルに水を入れて冷凍庫に入れたら膨らんで破裂する、あれだ。経験したことがある人も多いだろう。僕も一度やらかして、冷凍庫の中が大惨事になったことがある。

でもこれ、普通の物質では絶対に起こらない現象なのだ。

普通の物質は、温度が下がると分子の動きが鈍くなって、ぎゅっと縮まる。固体のほうが液体より体積が小さくなる。これが自然界の常識だ。

鉄だって、ロウだって、アルコールだって、冷やせば縮む。温めれば膨張する。当たり前だ。

でも水だけは逆だ。冷やすと膨張する。

これ、日常生活でもわりと影響がある。冬場に水道管が凍って破裂するのは、中の水が凍って体積が増え、パイプを内側から押し広げてしまうからだ。僕の実家でも一度やられたことがある。朝起きたら台所が水浸しで、修理代が地味に痛かった。あれも水の異常な性質のせいだったのだ。

ドライアイスで火傷するのも、実はこの性質と関係がある。ドライアイスに触れると皮膚の細胞内の水が急激に凍る。凍ると体積が増えるから、内側から細胞が破裂してしまう。これが「低温やけど」の正体だ。熱すぎても冷たすぎても同じ「やけど」が起こるのは、どちらも細胞が破壊されるからだけど、冷たいほうの原因は水の膨張にある。

なぜこんなことが起こるのか。その原因は、水分子の形にあった。

水分子は酸素1つに水素が2つくっついた構造をしていて、なんとなくミッキーマウスの顔みたいな形をしている。耳が水素で、顔が酸素だ。

この水分子同士がくっつくとき、プラスの部分とマイナスの部分が引き合うように結合する。これを水素結合という。普通の分子間力よりも強い結合だ。

で、問題はここからだ。

ミッキーの顔みたいな形の分子が水素結合で並ぶと、必然的に六角形の構造になる。雪の結晶が六角形なのはこのためだ。

六角形ということは——隙間ができる

ちょっとイメージしてみてほしい。丸いボールをランダムに箱に詰め込んだら、わりとギュウギュウに入る。でも同じボールを六角形の模様になるように並べたら、中心に隙間ができてスカスカになる。氷の中で起きているのはこれと同じだ。

液体の状態では分子が激しく動き回っているから水素結合が安定せず、分子同士がギュッと詰まっている。でも温度が下がって凍ると、分子の動きが止まり、六角形の構造でカチッと固定される。その結果、隙間だらけのスカスカの構造になる。

ちなみに水素結合は「強い」とはいっても、あくまで通常の分子間力と比べての話で、結合力自体はそこまで強くない。4℃程度の温度があれば分子の動きが水素結合を振り切って自由に動ける。だから水は4℃のときに最も密度が高く(分子が最もギュッと詰まっている)、そこからさらに冷えて0℃で凍ると、六角形構造になってスカスカになる。

だから氷は水より体積が大きい。つまり、氷は水より軽い。

だから氷は水に浮く。コップに入れた氷が沈まないのは、水のこの異常な性質のおかげだ。

「氷が浮くなんて当たり前じゃん」と思うかもしれない。でもこれ、他の物質で同じことは起こらない。溶けた鉄に固体の鉄を入れたら沈む。溶けたロウに固体のロウを入れても沈む。固体が液体に浮くのは、水だけの特権なのだ。

そしてこの「氷が浮く」という性質が、実は地球上の生命の存在に直結していた。

氷が浮くから、僕たちは生きている

「氷が浮くことがそんなに大事なの?」

僕も最初はピンとこなかった。でも説明を聞いて、鳥肌が立った。

想像してみてほしい。もし水が普通の物質と同じように、凍ると重くなって沈むとしたら——

冬になって海面の水が冷えると、凍った氷が海底にどんどん沈んでいく。海底から順番に氷が積み上がり、やがて海全体が底から凍りつくことになる。

こうなると、海の中の生物は逃げ場がなくなる。上からも下からも氷に挟まれて、生き延びることができない。

でも現実はどうか。

水は凍ると軽くなるから、氷は海面に浮く。海面の氷が蓋のような役割を果たし、その下の海水を寒さから守る。しかも水は4℃のときに最も密度が高い(つまり一番重い)ので、海底は常に4℃付近に保たれる。

つまり、どんなに寒い冬でも、海の底だけは安定した環境が維持されるのだ。

これが決定的に重要だったのが、地球の歴史上で最も過酷だったとされる全球凍結——地球全体が凍りついた時代だ。

今から数億年前、地球上で初めて光合成ができる生物(シアノバクテリア)が登場した。こいつらが光合成で酸素を大量に作り出し、当時大気中にあったメタンという強力な温室効果ガスと反応して、温室効果ガスが急激に減ってしまった。

結果、地球は急速に冷え、全体が凍りついた。光合成を頑張りすぎて地球を凍らせるって、ギャグみたいな話だ。

平均気温がマイナス50℃にもなる極限環境で、地表のほとんどの生命は死滅したと考えられている。しかもこの状態が数百万年も続いた。数百万年だ。人間の文明が始まってまだ1万年も経っていないのに。しかし海の底だけは4℃付近に保たれていたから、そこでわずかに生命が生き残った。

もし水が「普通の物質」だったら、海は底から凍りつき、全球凍結で地球上の生命は完全に途絶えていただろう。

氷が浮くという水の異常な性質が、生命を救った。

僕たちがこうして生きているのは、水が「普通じゃなかった」おかげなのだ。

蛇口から出てくる水を見る目が、ちょっと変わった。

そもそも「生命が生まれるには水が必要」という話はよく聞くけど、なぜ水じゃなきゃダメなのかは今までちゃんと考えたことがなかった。油やアルコールの海では生命は生まれないのか。

調べてみると、他の液体でも生命が生まれる可能性は理論上ゼロではないらしい。たとえば液体アンモニアは水よりも低温で液体でいられるから、もっと寒い惑星で生命の媒体になる可能性はあるという。

でも「生き残る」ためには、やっぱり水でなければならない。凍ったとき固体が浮いて海底を守るという、あの異常な性質がないと、惑星規模の寒冷化で生命が全滅してしまうからだ。水以外の液体は凍ると重くなって沈むから、海は底から凍りつく。逃げ場がない。

魚をお湯で育てるとどうなるか

水つながりで、もうひとつ面白い話がある。

魚をお湯で育てると、死ぬ。

「そりゃそうでしょ」と思うかもしれない。でも理由を知ると、ちょっと意外だった。

まず前提として、魚は変温動物だ。人間のような恒温動物は体内で熱を作って体温を一定に保つけど、変温動物はそれができない。周囲の水温がそのまま体温になる。

「じゃあ変温動物って不利じゃない?」と思うかもしれないけど、実はそうでもない。

恒温動物が体温を維持するには莫大なエネルギーが必要だ。たとえば同じ哺乳類でも、変温動物のナマケモノは1日たった10gの食事で生きていけるのに対し、恒温動物のネズミは50倍の500gも食べなきゃいけない。しかも夏は夏で、体内の余計な熱を捨てないとオーバーヒートするから、汗をかいたりして必死に体温調節している。恒温動物も恒温動物で大変なのだ。

水温が低いと魚は動きが鈍くなり、代謝も消化機能も落ちる。釣った魚をすぐに氷水に入れると魚が動かなくなるのは、急激な低温で体の機能が停止するからだ。これを「氷締め」というらしい。

逆に水温が上がると魚は元気になる。金魚なんかは26℃くらいの水温だと活発に泳ぎ回り、怪我の治りもよくなるそうだ。人間が温泉に入ると元気になるのと似ている。

じゃあ水温を上げれば上げるほど魚が元気になるかというと——そうはならない

なぜなら、水温が上がると水中の酸素が減るからだ。

温度が上がると水中に溶けている気体の分子が活発に動き出し、どんどん空気中に逃げていってしまう。温かいコーラの炭酸が抜けやすいのと同じ原理だ。あのシュワシュワが気の抜けたぬるいコーラになるのは、温度が上がると気体が水に溶けにくくなるからだ。

魚にとってこれは致命的だ。水温が上がると体は活発になって酸素の消費量が増えるのに、肝心の水中酸素はどんどん減っていく。必要な酸素は増えるのに、供給される酸素は減る。

結果、魚は窒息死する。

温泉に魚を入れたら死ぬのは、茹で上がるからではなく(それもあるけど)、酸欠で窒息するからでもあったのだ。

ちなみにこの話を知ってから、夏に金魚を飼っている友達に「水温管理ちゃんとしてる?」と聞いたら「うるさいな」と言われた。余計なお世話だったらしい。

数学的には雨は降らない

最後に、一番衝撃だった話を書きたい。

確率的に計算すると、地球上に雨が降ることはありえない。

……は?

いやいや、現に雨は降っている。僕は先週も傘を忘れてずぶ濡れになった。あれは幻覚だったのか?

落ち着いて聞いてほしい。

雨粒ができるには、空気中の水蒸気が集まって水の粒になる必要がある。ここまでは中学の理科で習う通りだ。

問題は、水には表面張力という力があること。

表面張力というのは、水ができるだけ表面積を小さくしようとする力だ。コップに水をギリギリまで注いでも溢れないのは、水の表面が膜のように引っ張り合っているからだ。

なぜこんなことが起こるかというと、水分子同士は引き合う力を持っている。水の内側にいる分子は周囲を360度他の分子に囲まれて安定しているけど、表面にいる分子は外側に仲間がいないから不安定だ。

だから水は、表面にいる不安定な分子をできるだけ少なくしようとする。その結果、水滴は表面積が最も小さい形——つまりになる。水滴が丸いのはこのためだ。

水はどんな容器にも合わせて形を変えられるのに、水滴だけは必ず丸い。メタモン型とかハート型の水滴があってもいいのに、現実にはない。全部球だ。表面張力がそうさせている。

で、ここからが問題。

小さな水の粒は、体積に対して表面積の割合が大きい。つまり不安定な表面の分子が多すぎて、くっついてもすぐにバラバラになってしまう。

雨粒サイズの水滴を作るには、最低でも約1億5000万個の水分子が空中で一斉に集まる必要がある。

1億5000万個。

これが「自然に」同時に集まる確率を真面目に計算すると——10億年に1粒できるかどうかというレベルになるらしい。

いやいや、数週間に1回は雨降ってるんですけど。しかも1粒じゃなくて何兆粒も降ってくるんですけど。

じゃあなぜ現実には雨が降るのか。

答えは、**空気中のチリや埃(ほこり)**だ。

実は雨粒は、純粋に水分子同士が集まっているわけではない。空気中に漂っている小さなチリや埃に水分子がくっついて、それを核にして雨粒が成長しているのだ。

つまり雨の正体は、水をまとったチリだったのだ。

……なんか、ちょっとイメージ変わらないだろうか。顔に降り注ぐ雨が、本質的にはチリだと知ると。

実際、空気中のチリが極端に少ない場所では雨が降りにくい。たとえば南極はあれだけ氷と雪に覆われているイメージがあるけど、実は降水量はかなり少ない。空気が澄みすぎていてチリがないから、水蒸気が集まるための「核」がないのだ。

南極では息を「はー」としても白くならないらしい。吐いた水蒸気がチリに付着できず、目に見える水滴にならないからだ。

逆に言えば、都会で雨がよく降るのは、空気中のチリや排気ガスの微粒子が大量にあるからとも言える。PM2.5とか花粉とか、僕たちが嫌がっているものが雨の「核」になっている。皮肉な話だ。

ちなみにこの仕組みを人工的に利用しているのが人工降雨だ。雲の中にヨウ化銀などの微粒子をばらまくことで、水蒸気がくっつく核を人工的に作り出して雨を降らせる技術だ。要するに、空にチリをまいている。原理自体はシンプルだけど、人間が天気を操れるというのはちょっとSFっぽくて面白い。

これを知ったとき、僕は雨の見方が完全に変わった。

傘を忘れてずぶ濡れになったあの日、僕の顔に降り注いでいたのは——空気中のチリに水がくっついたものだった。

ロマンチックなのか、不衛生なのか。判断が難しい。

水は「普通」じゃなかった

ここまで調べてきて、思ったことがある。

僕たちは水のことを「世界で一番普通の物質」だと思っている。無色透明で、味もなくて、どこにでもある。特別なものだと思ったことなんかない。

でも実際の水は、自然界の常識からことごとく外れた異常な物質だった。

凍ると膨張する。固体が液体に浮く。その性質のおかげで地球の生命は全球凍結を生き延びた。温度が上がると溶け込める酸素が減る。確率的に雨は降らないはずなのに、チリのおかげで降っている。

全部、水素原子が電子を1つしか持っていないという、たったひとつの特徴から連鎖的に起こっている現象だ。あのミッキーマウス型の分子構造が、地球の環境も、生命の存在も、雨の仕組みも、全部決めている。

宇宙のどこかに水がある惑星が見つかると、科学者たちは「生命がいるかもしれない」と色めき立つ。それは水がただの液体じゃなくて、生命を育むために必要な「異常な性質」をたくさん持っているからだ。凍ると浮く、適度な温度で液体になる、溶媒として優秀——水以外にこれらの条件を満たす液体は、今のところ見つかっていない。

たかが水。されど水。

正直、風呂に入るたびにちょっとだけ怖くなった。自分の体の60%を占めているこの液体が、こんなに異常な性質を持っていたとは。

でも同時に、こうも思う。この「異常な水」のおかげで、僕はこうして風呂に入れているし、コーヒーも飲めるし、雨に濡れて「最悪だ」と愚痴を言うこともできる。

分からないまま、でも水に感謝しながら、今夜もぬるめの風呂に浸かろうと思う。

——水道代は、もうちょっと安くなってほしいけど。

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